2つのCRMのポイントは?~コーズ リレーティッド・マーケティング~(准教授 富山栄子)
大学院では、1月16日の事業計画書の提出に向けて、連日、教員も院生も大忙しです。わがゼミ生たちも、連日、添付ファイルで事業計画書を送ってきてくれています。そのうちのひとりの院生のキーワードに「CRM」があります。
CRMとは、一般的には、Customer Relationship Management : 顧客関係性のマネジメントのことで、企業が顧客と長期的な関係を築く経営手法を指します。一回限りではなくいかに長期に渡って、優良顧客をロイヤルカスタマーとして囲い込んでいくのか、企業が頭を悩ませるところです。ロイヤルカスタマーになりやすいのは、製品・サービスが良いばかりではなく、企業経営者の理念に賛同するからとか、経営者が追う夢を自分も一緒に応援したい等の場合は、顧客を感動させ、強力な支援者にしますので、非常に強いです。
最近、もうひとつのCRMが登場しました。Cause Related Marketing(コーズ リレーティッド・マーケティング)の略語です。直訳すると「原因関連型マーケティング」です。Causeとは「原因、理念、大義、信念、要因」などを意味しており、それらに関連したマーケティング、簡単にいうと、支払い金額の一部を原因や大義のために寄付行為を通じて社会に貢献するマーケティングを意味します。売上の一部を○○に寄付しますという慈善事情協賛型のマーケティングです。
一番知られているのはボルヴィック社の「1ℓ for 10ℓ」プログラムです。
ボルヴィック社は、その売り上げの一部を、アフリカで飲料水を確保するための井戸づくりと10年間に渡るメンテナンスを行うユニセフ活動に寄附しています。このプログラムによって、ボルヴィック社は売上の大幅アップを達成したことは知られています。
こうしたCRM活動は、社会貢献にもなるばかりか、市民の環境や社会貢献に対する意識を高め、企業ブランド力の向上にもなります。いいことづくめのように思えます。
しかし、批判もあります。例えば、
1.慈善活動を隠れ蓑にして自社の売上追求のための偽善マーケティングを実施している。
2.製品に社会貢献活動を求める消費者は一部であって、企業の社会貢献活動は製品に付加すべきではなく切り離して企業は実施すべきである。
3.CRMの宣伝活動や販売促進コストは、賛同しない消費者にとっては余分な経費であり、コストアップとなる。
4.寄付行為は税金逃れである。
我々消費者も賢くなってきていますので、偽善マーケティングを見破る力は昔よりも備わってきていると思われます。本当にその企業が○○に貢献したいと考えていて、企業理念と寄附行為が首尾一貫している場合に限って、CRM(コーズ リレーティッド・マーケティング)は有効なのだと思います。
いずれにせよ、双方のCRMにとって、企業理念は非常に大切だと思います。そのポイントは、企業理念がいかに人を感動させるかにあるように思えるのです。