事業創造大学院大学

2026年4月、事業創造大学院大学は
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お知らせ

2009.12.03

現代自動車グローバル・ビジネス部門マーケティング戦略室を訪ねて(准教授 富山栄子)

怒涛の11月が終わり、いつのまにか12月になっていました。
11月はビジネスメッセ、日本ベンチャー学会新潟開催幹事校、韓国での自動車流通とマーケティング調査と息つく暇もなく、過ぎ去りました。

さて、11月後半に5日間ほど、韓国への調査に総勢5名で行ってきました。
今回のメンバーは一緒に研究をさせていただいている京都大学塩地洋先生、東京大学ものづくりセンター李澤建先生、日本学術振興会井上(朴)善美先生、京都大学大学院博士課程禹慶封さんです。
ハングル語のネイティブが二人もいて、多くの点で助けていただきました。
塩地先生との調査は夏の中国調査に続き二度目ですが、組織化といい、チーム作りといい、現地でのネットワークの広さとその構築力といい、教わる点が非常に多かったです。また、机上の空論ではなく、徹底的に現場をまわり、企業の担当者の生の声を大切にしている、フットワークの実に軽い立派な研究者でいらっしゃいます。

さて、今回の韓国調査の私にとっての目玉は、現代自動車のインタビュー調査でありました。

現代自動車のエントランスは実に開放的で、緑に溢れており、まるでアメリカにいるような雰囲気でした。働いている職員も実に優秀でした。

現代自動車グローバル・ビジネス部門マーケティング戦略室長はグローバル・ビジネスで博士号をもっており、理論的に物事を考え、かつ理論を現状に即して戦略を構築していました。現在でも論文を執筆しているそうで、話しがスムーズに通じ、頭の回転が素晴らしくて、えらく、感動しました。

日本では、文系においては博士号を取ると研究者としてしか使えないと言う方もいますが、韓国の現代自動車では博士号取得者が取締役として経営戦略を立案していました。また現代自動車産業研究所では、競合他社や世界の市場の動向などの研究が行われており、こちらも博士号を取得している研究員は高給で優遇されているとお聞きしました。文系の博士号の価値が両国ではかなり違うようです。

さて、現代自動車グローバル・ビジネス部門マーケティング戦略室長との議論において、おもしろかったのは、新興国における流通チャネルの構築についてでした。

海外ビジネスにおいて、もっともポイントになるのは、流通チャネルの開拓であると既存理論では言われてきました。海外に商品を輸出する場合、まず、販売子会社を現地に設立して、現地で流通チャネルを構築し、販売体制を整えてから現地生産を開始するというものです。
しかし、現代自動車は、インドと中国で、販売子会社を先に設立せずに、いきなり販売子会社と生産子会社を同時に立ち上げました。しかも、現地でディーラーの確保に苦労はしなかったといいます。推測の域を出ませんが、ディーラーに対する説明会を積極的に行って、ディーラーにどのようなメリットがあって、現代自動車のビジョン、ビジネススタイルがいかに有効なのかを丁寧に説明していったのがよかったのではないかと述べられていました。
現代自動車は常識を破り、既存の理論の説明ではできなかったことをやってきたとおっしゃっていました。
これも、既存理論を理解したうえで、自社はどういう戦略を構築すべきなのかを、常識にとらわれずに考えてきた良き結果なのだと思います。

新興国は、経済成長が著しく、ディーラーとしての経験はなくとも、意欲ややる気に満ち溢れた人材が多くいて、そうした人たちが新規ディーラーとして懸命に自動車を販売してくれたのだと思われます。

インド、中国、ブラジルなどの新興国における現代自動車のマーケティングの成功要因について一本論文を書く予定です。