下請け脱却?~ベンチャー学会パネル打合せより~(准教授 富山栄子)
2009年11月14日(土)~15日(日)、事業創造大学院大学が幹事校を務める「日本ベンチャー学会 第12回全国大会」が行われます。先日、一日目のパネルディスカッション打ち合わせを、コーディネーターの西澤昭夫先生(東北大学大学院経済学研究科教授)、パネラーの小林健治氏(㈱遠藤製作所 代表取締役社長)、松原亨氏(長岡産業活性化協会NAZE会長、マコー㈱ 顧問)、塩浦時宗氏(新潟県県央地域地場産業振興センター 産業振興部長)と、当大学院のベンチャー学会実行委員会のメンバー(今回は湯川学長、田中研究科長、郷道先生、事務局成田さん、富山)で行いました。
小林社長は当日、「地域企業とグローバル経営」というタイトルで問題提起をしてくださいます。小林社長には拙稿「中小企業の国際化と輸出マーケティングの課題~遠藤製作所の事例研究~」(『グローバル競争を生き抜く中小企業』創成社、2008年所収)のヒアリング調査やその後の訪問調査においても、大変お世話になっています。小林社長からは非常に多くのことを教えていただき、グローバルな視野をもった優れた経営者であると大変尊敬しております。
今回の打ち合わせでも、また新たな視点でのものの見方を教えていただきました。
それは、いつまでも下請けではだめである。目指すのは部品の完成形である。つまり、垂直展開と水平展開両方をやらないといけない。
(※垂直展開は今の技術やブランドを深化させてその分野でより強固な地位を確保すること。水平展開は、現在もっている技術やノウハウ、ブランドを他の分野に転用すること。)
たとえば、単なる部品を作ることに止まらず、加工している部品がどうなるのかという思いがないとものづくりは弱い。遠藤製作所はいかによい最終製品(ゴルフクラブ)を作るかを最大の目的にしてきた。そして、今ではゴルフヘッドという部品から出発して、自社クラブの完成品を手がけるようになった。(これぞ垂直展開!!)
水平展開では、自動車鍛造部品製造を農機具へ転用、今後はゴルフクラブの鍛造技術を、航空機産業の部品製造、セラミック素材とチタンを鍛造して作るインプラント(人工関節)へ拡大する見込みである。
自分のところに(最終製品として)見せるものがないとダメ。目指すのはパーツの完成形。
例えば、長岡では9割が下請けだとお聞きしましたが、それを脱却するヒントがここにあり!と思った次第です。
西澤教授からはアメリカでの現地調査の大変興味深いお話を、松原会長からはニッチトップを目指してきたお話、塩浦部長からは燕三条の企業の現状等について興味深いお話をうかがうことができました。
当日のパネルが「地場企業とグローバル展開」をめぐって、どのような話の展開になるか非常に楽しみです。