ユニクロのケースで学ぶマーケティング(准教授 富山栄子)
昨日の「新興市場マーケティング戦略」の授業ではユニクロのグローバルマーケティングについて討論しました。報告者のXさんはアパレルが専門ですので、わかりやすくプレゼンをしてくださいました。次にYさんが、次のような問題提起をしてくださいました。
【問1】
ファーストリティリングは、いわゆる「SPA」(Speciality store retailer for Private Apprel : 垂直統合型アパレル製造小売業)といわれるユニクロ事業を展開しています。また、マーケティングが市場細分化からワン・トウ・ワンへという流れの中で、ユニクロはターゲットを敢えて絞り込まない「ユニセックス・ノンエイジ」をコンセプトにベーシックなカジュアルを低価格で提供しています。
商品企画・生産・物流・販売までを一貫して行う「SPA」モデルのStrength(強み)とWeekness(弱み)について論じてください。
【問2】
2001~2003年の「失速期」、小島氏は「フリースブーム後の停滞をユニクロが工業的効率を極大化した“プロダクトアウト”に徹したために、顧客の間口も満足も大きく制限され、マーケット変化への対応力も限られてしまったことによるもの」と分析しています。
この危機をユニクロはどう乗り切ったかを論じてください。
【問3】
世界市場を目指すといいながら、現在の売上高(2008・8月期)の約79%、営業利益に至っては94%余りを国内ユニクロ事業が占めています。当初は中国でつくって日本で販売するという、ある面での国際化では成功しましたが、柳井社長は「海外市場でも同じやり方で成功させないと本当に成功したことにはならない」、また「日本で売れるものは世界で売れるはずであり、海外市場で売れないのであればさらに世界で通用するように日本で強くなるべき」であり、「国ごとに合わせるのであれば、日本から出て行く必要はない」とも言っています。
全体的には「GAP」と同様ファーストリティリングも「標準化志向の強い複合化戦略」を展開しているとのことですが、今後ある程度の適合化が求められる必要がないのかを論じてください。
問題提起の視点もこのように、どんどんとするどく進化してきております。「問題発見」力が養われてきており、大変素晴らしいことです!
さて、私が、ユニクロのケースでおもしろいと思ったのは、次のことです。
現代のマーケティング理論は、顧客を明確に想定し、そこに経営資源を集中することがいいと教えています。
コトラーは市場の「顧客(カスタマー)」のニーズを適切に充足させるためには「セグメンテーシヨン(市場の細分化)」を行い、ターゲティング、セグメントごとのマーケティング・ミックスを実施していく。魅力的かつ競争相手に勝てるセグメンテーシヨン・ターゲティングを構築することが、マーケティング戦略の中核と説きました。
これに従うと、ユニクロの場合は「顧客」が明確でないので、よくないマーケティング戦略にみえます。
しかし、コトラーはセグメンテーシヨン~ターゲティングのポイントとして、十分な規模を期待できるか?をあげています。期待できないときは、細切れのセグメンテーシヨン・ターゲティングはすべきではないとしています。ユニクロは「顧客を絞り込まない」ことが強さとなっています。
マーケティングにとって一番大切なのは「顧客だ!」「顧客が誰なのか??」と教わってきました。しかし、これはすべてに当てはまるわけではないわけです。
おもしろいと思いませんか??
「顧客は必ずしも絞りこまない方がいい場合もある」のです。