事業創造大学院大学

2026年4月、事業創造大学院大学は
開志創造大学(仮称)へ名称変更予定です。

お知らせ

2008.11.13

ぴあ(株) 矢内廣氏の特別講義(准教授 富山栄子)

矢内廣社長は、「第一の創業、第二の創業」というタイトルで講義をされました。心温まる良い講義でした。

「第一の創業」部分で印象に残っているのは、最初に雑誌ぴあを創刊したときのことです。本の流通チャネルがなくて困っておられたときに、ふと読んだ雑誌に手紙を出したところ、それがきっかけとなってキーパーソンと会うことになり、その人のおかげで全国の書店に置いてもらえるようになったとのことです。

そうした販売ルートや人的コネクションを自分で構築したところが素晴らしいと思いました。販売ルートや人的ネットワークは、与えられたものではなく、自分で切り開いていくものだということです。

「第二の創業」部分で印象に残っているのは、会社が大きくなっていって、自分は社長としてこうしたい、こうしようと思っていたのに、若い社員がついてこなかったというところです。「社長、それは無理ですよ。」と言われたそうです。それまでは会社がどこへ向かおうとしているのかというビジョンを示してこなかったそうで、そのことがあってからビジョンを示すようになったそうです。また、後からお聞きしたところ、一方的にビジョンを社員へ伝えるだけではダメで、社員と対話することが大切だというお話でした。

これは一体どういうことでしょう?

会社がそもそも何のために存在するのか?という自分の会社の存在意義がわからないと、社員の情熱が湧いてきません。自分たちは何のために仕事をしているのか?自分たちは何者なのか??会社が進むべきビジョンを示し、彼らに何を求めるのかについてはっきりと提示することが大切です。会社の利益を上げるために働いているのではむなしすぎます・・・・。社会に役に立つという点が大切です。
『ビジョナリー・カンパニー』でも述べられていますが、ビジョンは利益を超えるもの、社員が、企業の目的を信頼でき、かつ明確であり、駆り立てられるようなものであった方がいいです。

ちなみに、ぴあの企業理念は以下の通りです。 
“ひとりひとりが生き生きと”
 ―私たちは個人の価値観を尊重します
 ―私たちは、豊かで感動的な生活を営むための環境を創造します

では、経営者はなぜ社員と対話する必要があるのでしょうか?

トム・ピータースとロバート・ウォータマンの『エクセレント・カンパニー』では、歩き回る経営、つまり、経営者は一日の4分の3は現場に出向くべきだと主張しました。社員の話を聞き、指導し、意思の疎通を図るために、歩き回って部下とざっくばらんな会話を交わす場を持つ。社員とコミュニケーションを取ることで情報交換を行い、経営者が社員から学ぶこともあります。また、経営者は社員の考えていることを尋ね意見に耳を傾けなくてはなりません。なぜならば実際に実務を担っているのは社員であり、業績の向上には、社員の経験や判断が不可欠だからです。

社員との対話では、何が問題なのか、そのために何をすべきかを一方的に社員に伝えるのではなく、社員と一緒になって見つけ出していく方法が賢明です。なぜならば、社員を「パートナー」以上の戦力として扱うことになり、社員を一人の価値ある人間として、戦力として尊重することにもなります。社員は認められたと喜びから、熱意をもって仕事をするようになります。こうしたやり方でないと、上下関係や部門の壁を越えて共通の目標に向かって共に働く関係=パートナーシップがなかなか確立されません。

したがって、経営者は企業理念を一方的に伝えるだけでは不十分で、双方向のコミュニケーションに努める必要があるのです。

人を生かすには、いかに双方向のコミュニケーションが大切か、いかに社員を認めることが大切なことなのか、理解するよい例だと思いました!