事業創造大学院大学

2025年4月、事業創造大学院大学は
開志創造大学(仮称)へ名称変更予定です。

お知らせ

2008.07.10

iPodの筐体と東陽理化学研究所(准教授 富山栄子)

6月20日(金)、(株)東陽理化学研究所弥彦工場へヒアリング調査と工場見学に行ってきました。

 横浜国立大学 経営学部 曺 斗燮先生、横浜国立大学大学院 環境情報研究院 周佐喜和先生
新潟大学大学院 技術経営研究科 咲川 孝先生、長岡大学経営学部権五景准先生からお声をかけていただき、ご一緒させていただきました。研究仲間がいることは嬉しいことです。一人ですべてを行うことは不可能に近いです。この点、ビジネスと一緒です。

 さて、この会社、iPodの筐体(きょうたい)を作っている会社です。筐体とは機器類を入れる箱のことで、要するにiPodの裏側のあのピカピカのケースを作っているのです。iPodは毎日活用しているので、これを作る会社が新潟にあったなんてビックリです!

(ちなみに、iPodは隙間学習にお薦めです。iTuneから無料で役立つPodcastをダウンロードできます。すずりょうの「ビジネスの超ヒント」「ラジオ版学問のすすめ」「野口嘉則の幸せ成功法則ポッドキャスト」「稼げるコンサルタントのPodcastMBA」「売れる仕組み構築のためのポッドキャスティング」などは役立ちます。「ラジオ版学問のすすめ」「野口嘉則の幸せ成功法則ポッドキャスト」)はポジティブな生き方、モノの考え方に、それ以外はビジネスのヒントになります)

 この会社、元々は、燕で生産される洋食器の表面処理事業を行う、ステンレス電解研磨専門の企業として発足したそうです。その後、魔法瓶などのステンレス製品やチタン製のカメラボディの生産を経て、現在ではPC、iPod、携帯電話等のIT機器のボディの製造をメインで行っています。経営理念は「技術に生きる」で、チタンの技術を応用して魔法瓶を作り、その次は、カメラ。そして、今はIT関連の製品へとつながっているそうです。

 この会社の強みは、一貫生産体制(金型設計からプレス加工、溶接加工、板金加工、表面処理加工、組立、評価、測定)にあり、お客さんから設計をもらえば、一貫生産をしているので、その通りに製品を作ることができることにあります。

 中国へも2005年に進出。中国昆山市に現地法人を設立、操業を開始。中国進出の目的は、燕本社が高度加工技術部門を、中国(昆山)が労働集約型部門を担当するように棲み分けを行うためです。昆山は江蘇省の南端に位置し、江蘇と上海の間にあります。この地域周辺は中国の経済政策の特区となっており、世界54カ、約3000社あまりが進出しています。昆山市から上海までは50キロ、蘇州までは35キロ。この周辺はIT企業が集積しており、部品調達が容易なのだそうです。ですから、いくらベトナムの方が安いといっても、また、中国人はドライで、中国人の優秀な人材を社内に留めておくためには、高級優遇しかないのでお金がかかり、食堂の値段が上がったことが原因でストライキが起きるなど、問題は多いですが、中国昆山市から移転するつもりはないのだそうです。

 iPodの絶好調な売れ行きで、売上は3倍に伸びたそうです。これからは、燃料電池や環境関係で新たな製品開発の糸口を見つけたいとのことでした。

 さてiPodですが、製品のライフサイクルはどんどんと短くなってきており、導入期から成長期、成熟期と進むにつれて、価格はどんどんと下がってきています。消費者としてはありがたいことですが、メーカーとしては大変な時代です。せっかくいいモノを作っても、あっという間に価格は下がり、安泰とした年月は長くは続きません。とくに筐体というのは、iPodの一部ですので、アップル社からの値下げ要求圧力はすさまじいものがあると推察されます。結局、国内ではそこまで低コストでは生産できないので、中国で生産せざるをえません。iPodの筐体は全量中国で生産しているとのことでした。その中国でも人件費上昇、資材高騰と課題は山積みです。

 今後は、自社の技術力を生かした時代に合った製品を開発し続けていかなくてはなりません。そのためには、B2Bビジネスであっても(すなわち、自社の顧客が一般消費者ではなく、企業であっても)自社の技術力をはじめとする強みをどんどんと世の中にPRし(日本の会社は秘密主義で、とかく情報をオープンにしない企業が多いですが)、時代のニーズに合ったものを一緒に作り出していけるパートナーを積極的に見つけだしていくことが大切だと感じました。