事業創造大学院大学

2025年4月、事業創造大学院大学は
開志創造大学(仮称)へ名称変更予定です。

お知らせ

2008.06.09

これからの経営に必要なのは?―グローバル・マーケティングから考える―(准教授 富山栄子)

 5月30日~6月1日まで、日本商業学会があり、行ってきました(日程が重なり、野中先生の集中講義後半、院生との懇親会、子供のPTA歓送迎会に出席できないのは残念でした)。この学会は学会員1,000名以上の大きな学会で主として流通マーケティング研究者が所属しています。

 初日は、ワークショップ「日本企業のグローバルマーケティング」がありました。白桃書房から2009年3月までに『日本企業のグローバル・マーケティング』というタイトル、明治大学の大石芳裕教授編著で、松下電器産業(近藤文男先生)、ソニー(藤沢武史先生)、資生堂(田中洋先生)、花王(三浦俊彦先生)、味の素(林廣茂先生)、キッコーマン(熊倉広志先生)、トヨタ(大石芳裕先生)、イオン(嶋 正先生)、ユニクロ(平敷徹男先生)、公文(向山雅夫先生)吉野家(川端基夫先生)、TOTO(黄リン先生)、INAX(原田将先生)、スズキ(富山栄子)が出版されます。本書はそれぞれの企業を統一したグローバルマーケティングの分析枠組みで執筆が予定されています。

 すなわち、すべての執筆者は「グローバルマーケティングの動態的発展」を念頭に、

1.対象海外市場(複数)におけるマーケティングの変化

2.本社によるグローバル・マーケティング管理(複合化の視点から)

3.現地法人・地域本社からの知識移転

4.グローバル・シナジーの追求実態

について明らかにするというものです。

 グローバル・マーケティング研究の大先生らに混じって、ペーペーの私が執筆させていただくので十分に準備をしないといけないのですが、実を言うと調査はなかなか進んでおらず、現在も、スズキへお願いしているところです・・・・。白桃書房の担当者のKさんがおっしゃるように、一般の人が読んでもよくわかるように、面倒な内容でもわかりやすい言葉で書くよう努めたいと思います。

 私、個人としては、イオン、ユニクロ、公文、吉野家などの小売・サービス業がどのようなグローバル・マーケティングを展開しているのか興味があります。

 2日目は、基調報告がありました。招待講演として、2000年に日経・経済図書文化賞を受賞され事例研究の大切さを主張してこられた一橋大学大学院商学研究科の沼上 幹教授が「行為論的実証経営学の展開」というテーマで報告されました。基調報告の後のパネル討論の中で、沼上先生は、「企業の経営者と話をしていてわかるのは、企業の将来幹部候補生の研修で最も大切なのはマーケティングである。なぜなら、市場を知らないと経営は始まらないからである。それなのに、マーケティングを研究する研究者が、それぞれの分野に細分化しているのは心配だ」と話されました。その通りだと思いました。現在マーケティング研究はかなり細分化が進んでいます。マーケティング全体をふまえた上で、各自の研究を進める必要があると思いました。

3日目の統一論題第4セッシヨン『流通研究』特集号「グローバル・マーケティング・流通研究の発展方向を探る」で、大石芳裕先生が「グローバル・マーケティング研究の展望」というタイトルで報告されました。

 大石先生のご報告で印象的だったのは、現代の構図は新興国の成長でマーケティングが大きく変わってきているという点です。

 すなわち、

1.先進国中心のマーケティング思考の限界(ブランド、高価格で売っていく先進国中心のマーケティングは限界にきている)

2.市場として新興国の地位向上

3.先進国向けマーケティング手法の限界(コストリーダーシップがとれないと勝てない。たとえば、携帯電話は過剰品質は受けない。ノキアは中国向けのデザインにシフトし、世界統一した。アメリカ市場は伸びていない。途上国で伸びている。)

4.バリューチェーンの重要性増大と性格変化(ウェールマートなどの小売業の巨大化)

 また、新興国成長の光と陰として、新興国企業の多国籍企業化が進み、新興国生活水準が向上しているが、一方で格差は拡大し、地球環境問題は深刻化し、天然資源は枯渇し、地域や国家のエゴイズムは増大している。

 よって、今後の企業経営は

1.地球環境問題への対応

2.新興国の成長

3.小売業との連携・競争

というこの3つをグローバル・マーケティングは同時達成しなければならないというものでした。
 
 学会で勉強してきたことをスズキの分析および授業で役立てたいと思いました。