法廷通訳の取材(准教授 富山栄子)
法廷通訳についてBSN新潟放送の記者の方が事業創造大学院大学へ取材に来られました。新潟日報、テレビ新潟、UX新潟テレビ21に次いで取材は4回目です。
公訴事実は被告人のロシア人船員が3人で共謀し、営利目的で覚せい剤を輸入しようと企て、ウラジオストック港から、カンボジア船籍の貨物船に覚せい剤を携帯して乗船し、新潟県聖籠町東港中央埠頭で上陸して陸揚げし、覚せい剤を輸入したということで、覚せい剤取締法違反、関税法違反による裁判です。
争点は「塊が覚せい剤を含む違法薬物であると被告人が知っていたか否か」とのことです。
私は10年ほど前に、5年間ほど法廷通訳をやっていたことがあります。
そこで一番問題だなあと感じていたことは、取調べ段階の調書です。
調書は日本語で作成され、それを取り調べ段階の通訳人が読み上げて、被告人はそれを聞いて署名します。これが、ロシア語に翻訳されて、被告人がそれを読んで署名する分には問題ないと思いますが、ただ通訳人が読み上げるだけでは、微妙なニュアンスの違いや、被告人の聞き落としなど十分にありえることです。また、基本的に、判決は調書に依拠して出されますので、取調べ段階の調書への署名はとても大きな意味があります。
たとえば、アジアなど知らない外国へ行ったときに、自分の気づかないうちに、覚せい剤を荷物に入れられて、警察に拘束されたとします。通訳人を介して取調べを受け、理解できない言葉で調書が作成されます。それを読み上げられて、署名をさせられます。微妙なニュアンスの違いで、実際は本当に何の関わりもなかったのに、裁判では、調書に署名しただろうということで、有罪になって、本国に帰国できないことがありえるわけです。そういう意味では怖いです。
一方、日本国政府にしてみれば、調書を全部、外国語に翻訳していたのでは、経費がかかって大変です。
さて、裁判員裁判になってからは調書に基づいて判決が出されるのではなく、あくまでも法廷での証言に基づいて判決が出されるようですが、何がどう変わっていくのでしょうか?
法廷通訳人はものすごく緊張しますし、精神的なプレッシャーも加わり、3時間でも大変なのに、3月18日の初公判は丸一日やるようですので、負担が増すことは間違いないと思います。
BSN新潟放送のオンエアーは3月3日夕方のニュースとのことです。