事業創造大学院大学

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お知らせ

2009.09.11

中国の農村から、電気自動車が普及する?(准教授 富山栄子)

8月末の中国自動車調査は、科研の調査の一環として、京都大学上海センター主催の「中国河北省石家庄市近郊農村自動車消費調査」に参加させていただきました。

一番おもしろいと思ったことは、中国の農村から、電気自動車への買換えが進むのではないかという点でした。

馮 飛国務院発展研究中心産業経済研究部部長の自動車産業学会研究会での報告では、中国は2009年を新エネルギー車の元年と位置づけており、省エネの車を政府としては第15次五ヵ年計画で奨励をしている。新エネルギー車のなかでは、もっとも電気自動車が中国にもっとも合うパターンである。中国は原油自給率が低く、石油火力発電を増やしたくない。中国は石炭は豊富な国であるので、今後は石炭をガソリンに代替していく。ハイブリッドよりも電気自動車がよく言われるのは、石炭から発電できるからであるというものでした。

私たちが訪れた北五女村から石家庄市までは約10キロ。村民は皆、電動二輪車や電動自転車で通勤していました!電動3輪車に乗っていた村の男性は、自宅で15分充電して、80キロ走行できると話していました。なんと便利な!世界の電動自転車のシェアの98%は中国が占めています。

中国政府は自動車促進政策を実施しています。たとえば、1.6L以下の購置税優遇政策では、排気量1600cc以下の小型車は購置税を10%から5%に引き下げる。農村自動車購入振興策では農村戸籍者は新規購入する場合、1.3L以下商用車の購入では、最大5000元(約75000円)の補助が出る。買換推進政策では、使用期間8年未満の軽トラック、12年未満の小・中トラック、中型バス、黄標車(原稿の排ガス国家基準を満たしていない車)を2010年5月1日までに買い換える場合、3000~6000元(約45000~90000円)の補助が出るなどです。

さらに、中国民族系自動車メーカーのBYDオート(比亜迪汽車)は、もともと電池屋で、プラグイン・ハイブリッド車を世界に先駆けて製品化しました。ガソリン車は部品が3万~5万点も必要ですが、電気自動車はエンジンを使わずに電気で動くため、エンジンに関わる部品をほぼすべてなくすことができます。電気自動車はずいぶん部品が少なく、電気自動車はモーター(電動機)とバッテリー(蓄電池)があれば、後は数千点の部品で済むといわれています。
参入障壁が低いのです。先進国にキャッチアップすることは難しいであろうと思われるエンジン技術の開発に四苦八苦する必要はないのです。

農村の村民が電動二輪車から四輪車へ買い換えるときには、簡単にできる充電に慣れていること、石炭から発電できる電気自動車に中国政府が力を入れようとしていること、政府が農村自動車購入振興策を実施していることなどから、農村から電気自動車が普及することも十分あり得るのだと思いました。
日本人は、安全性への懸念から購入しなくとも、中国の農村から、安価な電気自動車があっという間に普及していき、世界の自動車産業の地図を塗り替えることもありうるのかもしれません。