事業創造大学院大学

2026年4月、事業創造大学院大学は
開志創造大学(仮称)へ名称変更予定です。

お知らせ

2009.09.08

書評『グローバル・マーケティング入門―「70億人世界市場」をとらえる新視点―』(准教授 富山栄子)

本書はグローバル・マーケティング(嶋正)、消費者行動、ブランド戦略(三浦俊彦)、流通・フードサービス(相原修)が主たる専門領域の3人の研究者による共著(発行:日本経済新聞出版社)である。
主に、マーケティングがグローバル時代にどのように変化していくかを知るヒントが書かれている。具体的には、第1~2章でグローバルな市場の変化、第3~4章で世界の消費者の動向や市場の選び方、第5章で市場参入方式、第6章でイノベーシヨンと価値創造、第7章でコミュニケーシヨン・流通、第8章でサービスのグロ-バル化、という内容になっている。

昨今の金融危機の影響を含め世界経済は大きく変化しており、特に新興国の人々が消費者として力をつけてきている。2008年の『通商白書』では、先進国10億人市場と世界の新興国40億人の合計50億人を最終需要先として考える事業展開の必要性が論じられている。日本経済の将来を考えるうえで世界と無縁でいられなくなってきており、パラダイムシフト(既成概念の大転換)が必要となっている。

本書の最大の魅力は、近年のこうした世界経済の大きな流れとそれに対するグローバル・マーケティングのポイントがわかる点にある。たとえば、グローバリゼーション3.0、世界のフラット化、「クールジャパン(Cool Japan)」、日本の「パラダイム鎖国」、「ガラパゴス化」、ジム・ロジャーズの21世紀の予測とアンガス・マディソンの世界のGDPシェア分析、グローバル・コモディティ、グリーン・コンシューマー、高コンテクスト文化と低コンテクスト文化、集団主義と個人主義、思考型製品と感情型製品、感情型製品における尺度化戦略、ロングテールとボーン・グローバル企業、BOP市場、スプリンクラー戦略とウォーターフォール戦略、デファクト・スタンダードとデジュール・スタンダード、バイラル・マーケティングなど、学生や一般人、研究者にとって有益な内容が満載されている。特に、ビジネスパーソンにとって、「日本ではマニアにしか売れないと見すごされていた商品・サービスが世界に目を向けると、かなりの市場になる」など、示唆に富む内容となっている。

共著という性格上、章立てに若干の疑問を感じる点もあるが、グローバル市場の最新の動向をコンパクトに把握できるという点で、一般教養書としても是非とも読んでおきたいお薦めの一冊である。