中国・石家庄市の建設会社の王社長(准教授 富山栄子)
中国の農村での調査の最終日に、石家庄市で建設会社を経営する王さんがご自宅に招待してくださいました。王さんのご自宅は貧しい北五女村の一角にあります。2年前に建築されたというご自宅はまるで御殿のようでした。BMW、AUDI、VW、ホンダ、トヨタのランドクルーザーと車を5台お持ちです。お嬢さんはフランスに2年間、経済学の勉強で留学、息子さんは現在日本の大学院で経済・経営学を勉強されておられます。お客が来るというので、親戚を総動員して、皆さんで手作りの水餃子を作ってくださいました。人出が必要なときは、こうして親戚が助け合うようです。
王さんの建設会社の社員は1200人。王さんが創業者であり社長です。石家庄市は急激に発展を続けている市です。しかし、ちょっと裏道に入ると、まだ舗装されていない道路が多々見られます。王さんの建設会社は、道路工事や、公共事業、商業ビルやマンション建設などを手がけておられるそうです。公共事業は入札によって決められ、役人の接待もするそうです。発展している時は、とくに道路整備が必要となります。王さんの会社もかなり道路工事の仕事を受注されておられるようでした。石家庄市北五女村では比較的裕福な人たちは、みな建設会社を経営していました。規模はさまざまで、数名の会社もありました。
中国で肉を買うと何が混じっているかわからないので、自宅専用の豚を4頭飼育していて、私たちのために、1頭新鮮な豚を絞めてくださったそうです。有難いことです。食の安全に対して自衛していること、自宅で豚を飼っていることが、実におもしろいと思いました。
また、王さんは大金持ちですが、とても村と村民のことを大切に思っておられました。そして村民の結束も固かったです。王さんの親戚一族が村の共産党執行部の幹部を占めていて、ここが全面的に今回の調査に協力の姿勢を示してくださいました。それで、ようやく中国農村での訪問調査がスムーズにできたのです。
中国では人間関係が、血縁、地縁に強く規定されており、集団内部の凝集力が強く、アジア的集団主義的傾向に符号すると指摘されていますが、まさに、そうした一面を垣間見た気がします。
何はともあれ、中国の村の富裕層の生活があまりに豊かなので本当に驚きました。
王社長の自宅前:全ての調査を終え調査団全員で