ロシアの自動車市場特集(准教授 富山栄子)
ユーラシア研究所より『ロシア・ユーラシア経済―研究と資料―』の6月号(http://www.t3.rim.or.jp/~yuken/sub2.html)が刊行されました。ロシアの自動車市場の特集です。なかなか興味深い内容です。たとえば、中国車の輸出先第1位はロシアであり、ロシアでは低価格でほどほどの品質でコストパーフォーマンスのよい中国車が売れている。日本からロシアへの輸出ルートとして極東港湾経由ルートが開拓されており、日系自動車メーカー各社はこのルートに関心を示しており、自動車輸出が激減しているにもかかわらず、モスクワ向けに試験輸送を行っている。このルートは従来のフィンランド・ルートに比べ輸送距離は半分、日数は30日短縮され、環境的にも良い。ロシア極東の中古車ビジネスの行方・・・・等々。
中国民族系メーカの対ロシア市場戦略
― 奇瑞汽車、長城汽車、吉利汽車のケース ― ‥ 富山 栄子
ロシア市場向け自動車輸送事情 ‥ 辻 久子
ロシアの自動車市場におけるアフトトル・グループ
― 主たる競争優位としてのカリーニングラード経済特区特恵 ―
‥ A.ウサノフ
(蓮見 雄 訳)
<シリーズ 定点観測> 変わりゆくウラジオストク
関税引き上げと極東中古車ビジネスの今後 ‥ 斎藤 大輔
<図書紹介>
日本におけるCIS中央アジア
― 6冊のブックレットを読んで ― ‥ 木村 英亮
私の力量不足から締切に間に合わず、連休中に悪戦苦闘したあの論文です!
私は論文の最後に次のように書きました。
「ロシアにおける中国車の顧客は中国車の「時間とエネルギーを節約できる輸送手段」「快適さよりも、安いガソリンで、悪路に十分耐えられ、コストパフォーマンスが良い」点、すなわち価格に見合ったほどほどの製品としての中国車を評価していた。ロシア市場において、これまで「無消費者」であった学生や年金生活者、あるいはこれまで中国製のSUV車を購入したことがないビジネスマンや社会的ステータスの高い人が、「寄せ集め設計」で作られた車の最低機能とコストパフォーマンスを評価し購入していたことを考え合わせると、コストパフォーマンスを最優先に追求する低価格志向の中国民族系メーカーは今後、価格競争力で優位に立ち、世界の新興市場国を中心に劇的に成長する可能性があるのではなかろうか。新興市場国の大半の中間層は、先進国のように、高品質、高性能、環境基準等を車に求めているわけではない。ロシアのような新興市場国は、中国車のような「寄せ集め設計」による「破壊的技術」を受け入れる市場であり、同様の構図がアフリカなどの世界の新興市場国で成功するのであれば、中国車が今後世界の新興市場国で大きく台頭する可能性を秘めているのではなかろうか。」
予測の域を出ませんが、これは、科研費のテーマでもあり、今年はこの研究課題を掘り下げるべく、中国とロシアへ調査に行きます。