MBAは文系のイメージが強いと思っている方が多いですが、経営においては理系の発想も重要です。今回は理系出身の学生と仙石学長との座談会から、本学で学ぶ意義や理系の方が経営を学ぶ重要性を感じ取っていただければと思います。
入学のきっかけは、経営への興味
仙石学長(以下、学長):皆さんは理系の分野の学部を卒業していますが、どういった経緯で本学に入学しようと思ったのですか?
オイドブスレン ツェツェグガラブさん(以下、ガラブ):最初は国費留学生として来日し、大学では情報工学を専攻しました。その後、モンゴルに帰国し就職しましたが、JICAのプロジェクトでモンゴルの中小企業の課題を知る機会があり、課題解決方法や経営自体に興味を持つようになりました。そんな時に本学のことを知り、入学に至りました。
村山 康吾さん(以下、村山):大学で化学工学の分野を選択した私は、卒業後一旦就職しましたが故郷の新潟に戻り、現職でもある㈱コメリに転職しました。現場経験や、店舗開発等を担当し、現在は社長秘書をしています。これまでの業務経験や秘書として経営企画等の話に立ち会える状況から、改めて経営について興味を持ち始めた矢先に、会社からの推薦もあり本学入学を即答しました。ここで学んだ知識や経験を基に会社に貢献していきたいと考えています。
五十嵐 浩司さん(以下、五十嵐):私は農業土木を大学院修士課程まで学んだ後、道路施工会社の研究所や土木設計会社に勤務していました。そのキャリアの中で土木技術や技術監理のスキルを学び、そのスキルや技術資格を活かす意味で起業を考えるようになりました。しかし、起業への知識が乏しいと感じたため、本学に入学することにしました。
経営学は理系のように法則がないから逆に面白い分野
学長:皆さん、共通して社会経験から経営学に興味を持ち、入学されたのですね。では、本学で学んでみていかがでしたか?
ガラブ:理系の分野では理論や実験を基に正解を求めるのに対して、MBAの学問に正解はないと感じました。1つのビジネスの手法が全ての企業に適用できるわけではありません。講義では、色々な企業のケーススタディを分析し、理論づけしたりパターン化したりしました。本学ではグループ皆でディスカッションする機会も多く、その中から適切な答えを見つけ出す過程で、他の学生から学べることが多かったですね。
五十嵐:ファイナンス系の授業は考え方に数学的な要素が多かったので、勉強すればするほど身につきました。逆に、経理の経験がなかったので、財務会計の授業は苦労しました。ただ、一つ一つ丁寧に、「借方」「貸方」の基礎から教わることができたので、最後は面白い学問だと感じられるようになりました。
村山:私はまだ、基礎的な科目しか履修していませんが…今まで経営に関して一切勉強してこなかったので、授業の内容全てが新しく、なぜこうなるのか?の理論を日々探求しています。発見、発見の毎日で楽しくて仕方ないですね。
学長:皆さんの言う通り、理系の分野は自然の原理など普遍性を求める傾向がありますよね。海外の有名大学のビジネススクールでもケーススタディが重要だと言っていますが、理系の方はその例題から共通の何かがないかを考えるでしょう。ところがこの経営の分野ではその発想がまだまだ少ないのです。法則がないことが逆に面白い分野でもありますね。
新たな産業を興す際は、理系の発想も重要
学長:今後、MBAの知識をどう活かしていきたいと思っていますか?
五十嵐:大学院博士課程に進学し、「建設分野におけるAI活用」という調査研究に取り組む予定です。例えば老朽化した道路や橋の構造物点検・調査を、AIを使って自動的に数値化し、点検・調査の迅速化・効率化に貢献するようなシステムを将来的にビジネス化し起業できたらと思っています。
ガラブ:私は日本のIT企業に就職します。ITと経営に関わる所で何かできないかと思っていたことが、やっと実現できそうです。せっかく経営の勉強をしたので、言われた事だけをやる課題解決型の仕事ではなく、企業の一歩先を見据えたソリューションの提案ができる仕事をしたいです。そして先々は、母国モンゴルの企業経営強化のサポートや、日本企業との間を繋ぐ架け橋的な役割を担いたいと思っています。
村山:私の場合はもう1年学ぶので具体的にはこれからですが、世の中や企業に対して新しいイノベーションを起こすのは文系的な発想の方が多く、それを持続的に続けて行こうとするのは理系的な発想の方が多いと思います。経営にはその持続性も大事だと思いますので、会社でそういう発想を持てる人を増やしていきたいですね。それが結果として会社に良い流れを作れると思っています。
MBAは人間教育の場、芯を持って学んで欲しい
学長:産業を興す際は、技術力の要素や、持続性が必要ですし、それが基礎となります。今はITやAIといった技術が先に進み過ぎて、社会のニーズが追いついていない印象です。そのギャップが詰まってくると、新しい産業が生まれる可能性があります。だからこそ、理系の方が本学で経営を学ぶことが重要な意味を持つのではないでしょうか? 皆さんはいかがですか?
村山:実際に組織の一員として働いている中では理系、文系は関係ないと思います。だからそこに捉われず、興味を持った分野を素直に学べば良いと思います。本学にはバランス良く色んなカリキュラムや環境が整っていますので、ぜひ幅広い方々に学んで欲しいですね。
五十嵐:私はMBAを学ぶことは人間教育の一環だと感じます。普段、目先の仕事に追われて、自分は何ができるか?企業や事業が果たす役割とは?等を考えることは殆ど無いと思います。しかし、ここには同じ志を持った人たちが集まっているので、色々な考え方や意見を聞くことができます。自分がどうなりたいかという立ち位置が見つかる場である本学で、ビジネスへの志を持つことの大切さを多くの方に実感してもらいたいです。
ガラブ:そうですね。自分の専門性をもっと深めるために大学院に進学する人が多いかと思いますが、最近の経済状況を考えると、MBAを目指してより幅広い知識を得ることが今後は大事だと思います。ここは意識の高い留学生が世界から集まりますし、社会経験豊富な日本人の方も多くいます。人脈や知識を広げる場として、とても良い環境だと思います。
学長:本学は日本人に留学生、男性、女性、若い方から年配の方まで正にダイバーシティの環境ですが、その中で切磋琢磨できることは非常に素晴らしいことだと思います。理系の方がビジネスをより深く学ぶことは有益なことですし、逆に文系の方が技術系を学ぶことも同様です。ただし、重要なのは自分のバックグラウンドのコアな部分である、誰にも負けないと思える所を1つでも持って取り組むことです。少なくとも1つは芯を持って学んで欲しいですね。それが自信にもつながると思いますので、皆さんのこれからに期待しています。頑張ってください。