事業創造大学院大学

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2011.10.13 イベント

早稲田大学大学院商学研究科教授・松田修一氏 【特別講演レポート】

早稲田大学大学院商学研究科教授・松田修一氏 【特別講演レポート】
 
 
早稲田大学大学院商学研究科(ビジネス専攻)ビジネススクール教授 松田 修一 氏
2011年9月10日(土)「日本の課題と企業の強さ」

2011年9月10日(土)、早稲田大学大学院商学研究科(ビジネス専攻)ビジネススクール教授を務める松田修一氏により、特別講演が開催された。「日本の課題と企業の強さ」と題した講演には、院生・一般の方を合せて、約80名の受講者が参加。

日本はモノづくりにおいて、世界のトップレベルを走ってきました。これまでの世界の競争力ランキングを見てみると、日本は1990年代、世界の最高ランキングに位置していましたが、現在の日本の競争力ランキングは、低下の傾向にあります。

原因として考えられることは、日本の「産業」、いわゆる「企業」の競争力が落ちてきたわけではなく、まだまだ日本の「産業(=企業)」は強いものを持っているのですが、「公的部門」の競争力が、世界の国々と比べると弱く、競争力に勝ち抜くベースができていない状況です。政府がどのように率いていくのか?が今後の課題の一つと言えます。

世界を見ると競争力の高い国々では、国策の一環として、政府が「企業(国内企業・海外企業問わず)」や「他国(もしくはアジア圏等の地域)」間と連携しながら、競争力を高めています。対する日本は、技術開発や歴史文化等において、いいもの(優れた技術力、日本人特有の細やかさ等)を持っているにも関わらず、総合的な事業構想競争力が上手くなく、本来持っているはずの日本人の力をまだまだ活かしきれていない現状にあります。

世界が認めた日本を代表する企業(ソニー、トヨタ自動車、パナソニック、任天堂など)を見てみると、多くは設立が古く、昨今、世界に通用する新たな企業はまだまだ生まれてきていません。しかしながら、設立の古い日本企業が、長い間、世界のトップレベルに位置しているということは、それだけ裾野の広い企業が日本に存在するメリットがあります。日本が誇る一流の総合縦型企業が、今もなお、水平分業を促し、専門横型企業という周りの関連産業を育てていることを意味しています。

一方これまで日本は、モノづくりを重視し過ぎ、余りソフトビジネスが育たなかったという課題があります。情報インフラ面をアメリカに握られていたとしても、クラウド時代になり、まだまだ付加価値の高い「様々なサービス」をローコストで提供できる余地があります。

世界のトップレベルにある日本の技術力は、非常に大きな強みです。この技術力やサービス面での強みを、一つの活かし方ではなく、多様な活かし方も探りながら新たな事業展開に向けてチャレンジしていくという「ワザの弾力性」こそが、今こそ必要です。

「自分の会社はこうだ」と決めてかからず、「自分の会社の強さは何か」、そして「その強みをどう活用できるか」を追求していくことが重要です。また「足りないところはオープン・ソース(資源)を使う」ことによって補えばよいのです。

日本がこれまでに築いてきた技術面における「日本のバリューチェーンの強さ」は世界に貢献できる日本の利であります。政府や企業がこれらをどのようにして活かしていくかが今後の大きな課題でもあり、日本から再び世界に通用する新しい事業展開が開けるチャンスでもあります。


 
 
≪プロフィール≫

■学歴
1967年 早稲田大学商学部卒
1969年 早稲田大学大学院
商学研究科修士課程修了
1972年 早稲田大学大学院
商学研究科博士課程修了
■学位
商学博士

■研究分野
経営監査論・技術ベンチャー輩出論

■所属学会
日本ベンチャー学会(前会長・理事)
危機管理システム研究学会(理事)
ビジネスモデル学会(理事)

■職歴
1973年 監査法人サンワ事務所(現監査法人トーマツ)入所
(企業調査、ベンチャービジネスの経営支援、上場準備会社の監査、企業内研修等に従事)
1986年 監査法人サンワ事務所退所
早稲田大学アジア太平洋研究センター(旧システム科学研究所)
助教授:ビジネススクール担当
1991年 早稲田大学アジア太平洋研究センター教授
1993年 早稲田大学アントレプレヌール研究会代表理事(現任)
1996年 早稲田大学学外連携推進室長
1998年 早稲田大学ビジネススクール・経営大学院(国際経営学専攻)教授
早稲田大学ビジネススクール・経営専門職大学院(MOT担当)教授
2007年 早稲田大学大学院商学研究科(ビジネススクール)教授 (現在)

■単著・共著
・『経営監査の理論と実務』  (中央経済社)
・『経営監査論』  (現代出版)
・『経営戦略を読む』  (日本経営出版界)
・『変革日本型経営』  (第一法規出版)
・『コーポレートベンチャリング』  (ダイヤモンド社)
・『ベンチャー企業の経営と支援』  (日本経済新聞社)
・『ベンチャーファイナンスの多様化』  (日本経済新聞社)
・『起業家の輩出』  (日本経済新聞社)
・『起業論』  (日本経済新聞社)
・『ベンチャー企業』  (日本経済新聞社)
・『会社のしくみ』  (日本実業出版社)
・『MOT(技術経営)入門』  (日本能率協会マネジメントセンター)
・『MOTアドバンスト技術ベンチャー』  (日本能率協会マネジメントセンター)
・『ビジネスゼミナール会社の読み方』  (日本経済新聞社)
・『日本のイノベーション1 ,2 ,3』   (白桃書房)
 他、論文多数