北京現代自動車工場&本社調査報告(2010年8月)(教授 富山栄子)
現代自動車の北京にある中国工場と販売子会社に調査に行ってきました!現代自動車は中国でもCセグメントの「エラントラ」がよく売れていて絶好調です。
工場は空港から10キロ、天安門から50キロのところにありました。北京現代自動車本社は、北京市市内にあります。
北京現代自動車広報部の優秀な女性が日本語で会社について説明をしてくださいました。
こんなに優秀な広報官はなかなかいないというくらい感動するほど優秀な方でした!
現代自動車の従業員の方々には何度も調査に協力していただきましたが、皆さん、本当に優秀だと思います。
北京現代自動車(Beijing Hyundai Motor Company)は韓国現代自動車が50%、北京自動車投資会社50%出資して2002年に設立された合弁会社です。
北京現代の工場は、先端の自動設備を備えた量産型の巨大な工場でした!設備もグリーンフィールドらしく、実に真新しい!
工場面積 60万坪 第1,第2工場、エンジン工場、技術センターが入っています。
ディーラー数は中国全土で現在540店、2010年末までに600店へ増やす予定。
従業員7900名 2交替で勤務。
勤務時間は朝8時~夜8時(残業3時間、お昼休みは12-13時)と夜8時~朝8時の2交替。従業員は給料の手取りが増えるので残業は歓迎している模様です。
部品の現地調達率は94%。6%は韓国から輸入。
現地調達率が高い!
部品納入会社156社 67社は北京地域 89社が地方から。
大きな部品を運んでくる会社は40キロ以内。
中国市場でなぜこんなに現代自動車が大躍進したかといえば、その理由のひとつに、「現地適合化」が挙げられます。
すなわち、中国人消費者の嗜好に合わせたモデルで、エラントラの中国モデル「エラントラ悦動」」(エラントラ・ユエドン)を適時に投入しました。他の国には売っていない中国式デザインとのことです。そのポイントは大きく見えることとキラキラ、ピカピカ見えること、室内空間が広いことなどなど・・・。
こうした「現地適合化」が大幅な販売増へとつながり、市場シェア拡大につながりました。
「標準化vs現地適合化」
現地適合化は望ましいけれど、お金がかかるので、なかなか難しいです。しかし、現代自動車の強みは、現地の好みを徹底的に研究して、製品開発チームをつくって、ターゲット顧客層から商品性を徹底的に分析する「現地適合化」にあります。「エラントラ・ユエドン」の製品開発もこれが成功の要因でした。
一方、完全な「現地適合化」をしたわけではありません。
パワートレインは同じものを使い、前と後ろのデザイン、スタイリングと細かい仕様が違うだけ。すなわち、パワートレインなど基本は「標準化」して、デザインやスタイリングなどで「現地適合化」を行い、「標準化と現地適合化の複合化」によって中国市場で一気に市場占有率を高めたのだといえます。
「現地適合化」は、日本企業をはじめ、世界の企業がそうしたいと望むところでしょう。しかしながら現地の嗜好に合致した製品の開発には、多額の資金がかかります。その決定のポイントは「経済性があるか否か」だそうです。
中国やインド市場といった巨大市場であれば、大量に売れる見込みが高いですので、「規模の経済性」が働き、現地の嗜好に合致した製品開発を進めやすいということだと推測されます。現代自動車のターゲットは、「ボリュームゾーン」にありますので、「規模の経済性」が一層働きやすいともいえます。
中国市場は、インド市場と並び、現代自動車にとって重要な市場です。現在第三工場建設中で、完成すると中国だけで年産100万台。その戦略の特徴は「スピード」と「規模の経済性」だと思います。
また、生産面では、人間の力をできるだけ使わない自動化率が高いことも特徴です。
プレス、車体の組み立てほとんどが100%自動化、塗装工場は60%、最終組み立て工場は10%。
製造ラインはほとんど停止する時間がありません。
稼動率は平均 99.5%(第2工場稼働率:2009年)
98%(第1工場稼働率)。
つまり、作業者は標準化された作業をこなし、最後のOKラインで品質管理のチェックを行うという分業になっています。だから製造ラインはほとんどストップしません。
また、1ラインで5車種を混流生産しているのでモジュール生産比率も高く、平均35%をモジュール生産しているそうです。モジュール(複合)部品を最終製品に組み入れる生産方法がモジュール生産方式です。
北京現代の隣にサプライヤー「現代モービス」があります。「現代モービス」が、モジュール(複合)部品を事前に組み立てて北京現代へ納入しています。こうしたサプライヤーのレベルが高ければ、北京現代の自動車の品質は安定し、生産効率も高まりますね。
一方、北京現代自動車の問題点としては、アメリカでは現代自動車の高級車「ジェネシス」や「ソナタ」などが売れておりますが、中国では高級車が売れないことにあります。エラントラは売れますが、その上の車「ソナタ」はあまり売れていません。今後、上級移行できるようにブランド力の構築が鍵となります。
調査を受け入れてくださった現代自動車の皆さん及びアポ取りの労を取ってくださり、現地調査のやり方を教えてくださった塩地先生をはじめとする一緒に調査をしてくださった諸先生方には本当に感謝しております。