事業創造大学院大学

2026年4月、事業創造大学院大学は
開志創造大学(仮称)へ名称変更予定です。

お知らせ

2009.12.22

韓国における日韓自動車メーカーのサービスの違い(准教授 富山栄子)

世界でもっとも、新車に占める外車の売上台数が少なかったのがこれまでは韓国だったそうですが、韓国で日本車が売れるようになった結果、日本が世界でもっとも、新車に占める外車の売上台数が少ない国になったということです。

韓国で日本車が売れるようになってきた要因のひとつに、サービスの良さがあると思います。

韓国の現代自動車や起亜自動車の販売は、直営店が半分で、ディーラーが半分。その中でサービスファクトリーをもっている拠点はひとつもありません。販売とサービスを一緒にしている所はなく、サービスファクトリーはあるけれども、そこでは車などのモノは売らないのだそうです。つまり、販売した人(場所)と修理する人(場所)が異なるのだそうです。

一方、例えば、ホンダ韓国では、販売した後修理まで責任をもってアフタサービスを行っています。ホンダは韓国には規制があって、整備工場で塗装ができないながらも、3S店によって、ひとつのお店で全部カバーでき、ショールームにはクイックサービス(点検とかちょっとした整備ができる)があります。ホンダの場合はディーラーが顧客を事故でも故障でもライフサイクルを通じてすべてケアします。

ディーラーのサービスを考える上のキーワードは4Sや3S店という用語です。4Sとは、

(1)新車販売(Sales of New car)
(2)部品販売(Sale of Parts)
(3)アフタサービス(Service)、
(4)顧客情報の管理と情報のフィードバック(Survey of customer information)

の4つの頭文字“S”を取ったものです。
(4)の情報のフィードバックとは顧客維持(カスタマー・リテンション)の徹底のためにディーラーとメーカーが顧客情報を共有することを意味しています。これらの4つの機能を合わせたディーラーを四位一体(4S方式)のディーラー“4S店”と呼んでいます。
簡単言うと、4S店(Sales、Spareparts、Service、Survey販売・部品販売・アフターサービス・顧客データ調査)です。

ホンダの3Sとは、完全な修理点検などのアフタサービスまではできないけれど、クイックサービスはできるという点で3Sなのだと思われます。

顧客は、車を購入したディーラーに必ず入庫するとは限りません。ディーラーから車を購入した顧客は、一般の修理工場や他のディーラーなどに修理や点検を受けに行く可能性もあります。ですから、ディーラーは顧客情報を収集し管理して、車検や6ヶ月点検などの入庫に向けて、電話や郵便で緊密な連絡を取って、顧客を維持していく「カスタマー・リテンション活動」が重要となります。サービスが悪いことが一度でもあると、そうしたディーラーへの入庫は敬遠されます。

現代自動車のように、販売する人(場所)と修理する人(場所)が異なるとなぜ悪いのでしょうか?

最大の問題点は、修理する場所が異なると、丁寧に一生懸命に修理点検してくれないことではないでしょうか。販売する場所と修理する場所が同じであれば、至れり尽くせりで修理点検して、顧客満足と信頼を獲得し、次の買い替え需要につなげてもらうことが可能です。自分は特別な存在として認識されていると思わせることが、ディーラーから提供される製品やサービスの価値を高め、販売機会の増加へとつながります。しかし、修理する場所が異なると、そうはいきません。

まず、コミュニケーションが密ではなくなります。ディーラーと顔を合わせることもなくなります。顧客とディーラーは対話する場が形成され対話が促進されたことによって、関係性がより緊密なものになります。顧客と対話する場を増やすことは、そのまま顧客との関係性の強化につながります。顧客が関係性の主体ですが、直接修理を行うサービスセンターでの修理では、顧客とディーラーの双方向のコミュニケーションがなくなります。
顧客を知るためにはコミュニケーションが不可欠です。重要なのは顧客とコンテキスト(文脈)を共有することです。ディーラー側は個々に分散している顧客のコンテキストに合わせたコミュニケーションを行い、コンテキストの共有を行うことが必要となります。これがあってはじめてコミュニケーシヨンが円滑となり、価値の共有が可能になります。
異なる場所でのサービスセンターでの修理ではディーラーによる顧客との価値の共有ができません。

このように、修理サービスをすべてサービスセンターで請け負う場合、一見、効率的なようですが、顧客との関係性が構築できません。顧客が何か問題を解決するために電話をかけるたびに、異なる人間に電話がつながります。そこでのリレーシヨンシップは、どうしても、実のないものになります。また、ディーラーにとっては売上増になりませんので、顧客を特別な存在とは認識できなくなりますから、アフタサービスに力が入りません。

サービスにおいて成功する戦略とは、顧客にとっての企業とのリレーションシップにインパクトを与えうる瞬間を確立し(修理点検での満足するサービス)、その瞬間にリレーションシップを固め(信頼を獲得)、継続させるためにいかに上手く対応するかです。

韓国の現代自動車のように、ディーラーとは異なる場所にあるサービスセンターでは、これができないことが最大の問題点と言えると思います。