事業創造大学院大学

2026年4月、事業創造大学院大学は
開志創造大学(仮称)へ名称変更予定です。

お知らせ

2009.07.23

グローバル金融資本主義の崩壊と「グリーン」で「クリーン」な21世紀型ビジネスモデル(准教授 富山栄子)

京都で開催された多国籍企業学会へ行ってきました。
多国籍企業学会会長の安室憲一大阪商業大学教授のお話が印象的でした。

以下、安室先生のお話です。
アメリカでは、ゾンビー化した大手金融機関の救済のために、不良債権の時価評価を停止し、あたかも財務内容がそれほど悪くはないように取り繕っている。さらに、社債や負債は時価評価を行って、評価額が低下した分を利益とみなす粉飾をアメリカ政府が認めている。それは「ステートメント159号」であり、要は、国際会計基準改悪の指示である。
つまり、企業が100億円の社債を発行していて、業績が悪化して社債の市場価格が90億円に下がったとするとその差の10億円を評価益として計上してもよいというものである。その理屈は、100億円の負債が90億円に下がったのだから、企業には10億円分の返済義務が減った。だから、この部分は利益として計上してよいということだ。たとえば、シティバンクは、09年1-3月期の最終利益が16億ドルの黒字だが、実際は、27億ドルが「負債の評価益」であり、11億ドルの赤字なのである。これをもって世界のマスコミが「世界経済は底を打った」と報道する。政府関係者も「世界経済は底を打った」と言う。国家が粉飾決算に狂奔するというこれほどのモラルハザードはいまだかつてなかったことだ。
グローバル金融資本主義は崩壊し、わずかな元手で、何十倍のレベレッジを利かす金融ビジネスは今後、厳しい規制のもとにおかれるようになる。アメリカを含む主要国が、経済力を取り戻すためには、再び製造業に回帰する必要がある。その製造業とは20世紀型の大量生産・大量販売・大量廃棄のビジネスではなく、グリーンでクリーンは、効率的で信頼性の高い、知識製造業である。

といった内容のものでした。

私は、シティバンクなどの黒字決算を見て、そしてアメリカをはじめとする政府関係者の話をテレビ報道で見て、世界経済は底を打ったのかなと思っておりましたが、とんでもなく甘い考えだったようです。新聞やテレビの報道もその裏側には何があるのかをよ~く自分の頭で考えないといけません。

また、これからは地球環境を保全して、温暖化ガスの放出を抑制して、地球環境にやさしいエネルギー資源で生産を行うビジネスが求められるということに異論はないと思います。

しかし、アメリカにも、学ぶべき、製造業はあります。前回授業でケーススタディとして取り上げたアヴェダです。この会社は、30年も前からそうしたクリーンでグリーンな製造を行ってきました。化粧品会社として初めて100%風力発電で生産。オーガニックの原料をフェトレードで、伝統的なコミュニティから適正価格で買い付け、彼らの生活の自立にも寄与。環境に負荷をかけないパッケージで業界の新基準を確立。「ゆりかごからゆりかごへ」の徹底(ごみの概念を捨てさり、企業が価値有る資源を再発見してなんども再利用して、新たな品質製品をつくるのを可能にする)等々・・・。
さまざまな点で社会に貢献している会社で「知識製造業」にふさわしい企業だと思います。

21世紀のビジネスモデルは、まさにこのようなビジネスが人々の支持を得ていくるのではないでしょうか?